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一円玉 [巷の雑感・時の想い]

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自宅から仕事場までは、さほど距離が有る訳ではないのですが、その途中にあるスーパーマーケットによく立ち寄る私です。先日も、飲み物でも買おうとレジに並んだ時に、レジ係の中年女性から声を掛けられました。
「待ってたのよ。この前来られた時に落とした一円玉、見つけておいたから」
そう言われて、一円玉を渡されました。そのレジ係の方とは、今まで客として以上の会話などしたことが無く、もちろん名前も知りません。世間話さえしたことがありません。よく行くので顔を知っている程度です。その方も同様、私のことなどほとんど知らないでしょう。そして前回来た時に、レジで支払う時に一円玉を落として、レジ台の下に入ったのか見つからずに、「一円ぐらいいいさ」と思って立ち去ったことなど、その時まですっかり忘れていました。
「次の日に来るかな、と思ってたんだけど、来なかったから」
その方は、事の仔細を書いたメモ用紙にその一円玉を張り付けて、引継ぎをしながら私が来るのを待っていたそうです。そんなことをすっかり忘れていた私が、やっと今日になって現れた、という訳です。さほど大型とは言えないスーパーマーケットとはいえ、一日に訪れる客はかなりの数でしょう。その中のたった一人に過ぎない私の落とした一円玉を、私が「たかが一円」と見捨てた一円玉を、その方はしっかり保管し、また来るであろう私を待っていてくれたのです。名前も素性も知らない私の為に。ちょっと感動してしまいました。それと同時に、一円をおろそかにした自分を恥じました。
「ありがとうね。ホント、ありがとう」
私はただ、その言葉しか出ませんでした。
クレジットカードやデビットカード等が普及した今では、こうした小銭をジャラジャラと持ち歩く方は、特に都会では少なくなりつつあるでしょう。そんなカードをかざして支払った方がスマートだし、レジ係の方も楽なのかもしれません。それでも一円玉は、最小単位とはいえ、現在の日本の貨幣に違いありません。その日私に渡された一円玉の、何と暖かだったことか。
街路樹の落ち葉が日増しに増える歩道を、その日ばかりは晴々とした気分で歩く私でした。

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